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巴戦の勝率について

相撲の優勝決定戦で、相星が3人以上いる場合、そのうちの誰かが2連勝するまで対戦する。
この対戦形式を「巴戦」と呼ぶが、このとき、3人の力士の力量が全くの互角であるとした場合、
最初に対戦する2人と待機する1人を比較すると、果たして勝率は公平なのか検証してみることにする。

巴戦に関する問題は、大学の入学試験の問題としても出題されることが多いが、
煩雑な解法が模範解答になっていることが多いので、
ここでは、奇を衒わずに、最も簡素な解法のみを示す。




巴戦は公平なのか?

最初に対戦する2人をAとB、待機する1人をCとし、勝者を記載していくことにする。
2回戦で決着する場合、AAとBBの2通りであり、いずれも確率は、
(1/2)2=1/4
となる。これは、最初に対戦する者が2連勝して、最速で優勝者が決定される場合である。

次に、3回戦で決着する場合を考える。
条件を満たすのは、ACCとBCCの2通りであり、いずれも確率は、
(1/2)3=1/8
となる。即ち、3回戦でCが優勝する確率は、
1/8+1/8=1/4
である。このように、最初に待機する者が優勝者となるのは、
3回戦、6回戦、9回戦、・・・の様に、3の倍数の時のみである。

続いて、4回戦で決着する場合を考える。
条件を満たすのは、ACBBとBCAAの2通りであり、いずれも確率は、
(1/2)4=1/16
となる。これは、最初に対戦する2人のうち負けた方が、敗者復活戦を制した場合である。

同様に、5回戦で決着する場合を考える。
条件を満たすのは、ACBAAとBCABBの2通りであり、いずれも確率は、
(1/2)5=1/32
となる。これは、最初に対戦する2人のうちの勝者が、
待機していた者に負けた後、最終的に優勝する場合である。

最後に、6回戦で決着する場合を考える。
条件を満たすのは、ACBACCとBCABCCの2通りであり、いずれも確率は、
(1/2)6=1/64
となる。即ち、6回戦でCが優勝する確率は、
1/64+1/64=1/32
である。勿論、7回戦、8回戦、9回戦、・・・の様に、
繰り返される場合も考えられるが、ここまで考えれば、
そろそろ、優勝者とその確率について、規則性に気付くだろう。

Cが優勝するのは、3回戦、6回戦、9回戦、・・・の様に、
3の倍数の時のみであるから、それぞれの場合の優勝確率は、
初項a=1/4、公比r=1/8の無限等比級数となる。
従って、Cが優勝する確率は、無限等比級数の和:
a/(1-r)=(1/4)/{1-(1/8)}=(1/4)/(7/8)=2/7
であり、AとBは、
{1-(2/7)}/2=5/14
という結果が得られる。

従って、3人の力士の力量が全くの互角である場合、
最初に対戦する2人よりも待機する1人の方が
「不利」という結論が得られることになる。
これは、最初に対戦する2人は、最初の対戦で負けても、
最初に待機していた者が勝てば、再び対戦できるのに対し、
最初に待機する者は、最初の対戦で負けた時点で、
相手の優勝が決まってしまうためである。




巴戦が公平になるためには

最初に対戦するAとBの2人に対し、待機するCが「少し強いぐらい」であれば、
優勝決定戦が巴戦の形式であったとしても、不利にならないかもしれない。
では、AとBの2人がCに対し、どのぐらいの勝率であれば、巴戦が公平になるであろうか。

A或いはBから見た、Cに対する勝率をp、Cから見た、
A或いはBに対する勝率をq ≡ 1-pp < q)とする。
2回戦で決着する場合、AAとBBの2通りであり、
いずれも確率は、 p/2 となる。

次に、3回戦で決着する場合を考える。
条件を満たすのは、ACCとBCCの2通りであり、
いずれも確率は、 q2/2 となる。
即ち、3回戦でCが優勝する確率は、 q2 である。

続いて、4回戦で決着する場合を考える。
条件を満たすのは、ACBBとBCAAの2通りであり、
いずれも確率は、 (1/2)・qp・(1/2)=pq/4 となる。

同様に、5回戦で決着する場合を考える。
条件を満たすのは、ACBAAとBCABBの2通りであり、
いずれも確率は、 (1/2)・qp・(1/2)・pp2q/4
となる。

最後に、6回戦で決着する場合を考える。
条件を満たすのは、ACBACCとBCABCCの2通りであり、
いずれも確率は、 (1/2)・qp・(1/2)・q2pq3/4
となる。即ち、6回戦でCが優勝する確率は、
pq3/4+pq3/4=pq3/2
である。

Cが優勝するのは、3回戦、6回戦、9回戦、・・・の様に、
3の倍数の時のみであるから、それぞれの場合の優勝確率は、
初項aq2、公比rpq/2の無限等比級数となる。
従って、Cが優勝する確率は、無限等比級数の和の式より、
a/(1-r)=q2/(1-pq/2) =2q2/(2-pq)=1/3
で与えられる。これに両辺の分母を掛けて、
6q2=2-pq
の様に分数を含まない式に変形し、更に、定義:q ≡ 1-pより、
p=1-qを代入して、pを消去すると、
6q2=2-pq =2-(1-q)q=2-qq2
⇔5q2q-2=0

という二次方程式が得られるので、解の公式より、
q={-1±√(1+40)}/10
q>0より、q={-1+√(41)}/10
ここで、642=4096 ≒ 4100より、√(41) ≒ 6.4
と近似すると、q ≒ (-1+6.4)/10=5.4/10=0.54
従って、p=1-q=1-0.54=0.46

結論としては、優勝決定戦が巴戦の形式であったとしても、
最初に対戦するAとBの2人に対し、待機するCが不利にならないためには、
CがAとBの2人より、「少し強いぐらい」であればよい。では、具体的には、
どのぐらいの勝率であれば、巴戦が公平になるかといえば、
CがA、或いはBよりも、8%程度勝率が高ければよい。




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