相対性理論は、「相対論」とも呼ばれるが、これと量子力学は、相容れないとよくいわれる。
しかし、相対性理論には、特殊相対性理論と一般相対性理論の二種類があって、
確かに、一般相対性理論の重力と、量子力学の摂動論の両者は、確かに相容れないのだが、
特殊相対性理論の範囲であれば、両者は極めて相性がいい。
例えば、量子力学に対して、特殊相対性理論を適用した、「相対論的量子力学」という理論が存在する。
ここでは、「相対論的量子力学」から、「クライン・ゴルドン方程式」と、
「非線形物理学」のソリトン方程式から、「サイン・ゴルドン方程式」について述べる。
まずは、本題に入る前に、準備として、
シュレーディンガー方程式の時と同様に、
エネルギーや運動量を以下の様に演算子化しておく。
次に、特殊相対性理論より、以下の式:
E2
=c2|p|2+m2c4
=c2(px2+py2
+pz2)+m2c4
を、上記の様に演算子化させ、波動関数:
φ(r, t)
=Aei(k・r-ωt)
⇔φ(x, y, z, t)
=Aei(kxx+kyy
+kzz-ωt)
に左側から作用させると、
となる。ここでは、座標x, y, zを明示した場合、
それらを位置ベクトルrとナブラ演算子の2乗∇2でまとめた場合、
ナブラ演算子の2乗をラプラシアンで書き直した場合の3通りの方法で表現している。
※運動量ベクトルの定義により、p2=|p|2=p2
=px2+py2+pz2
である。
※波数ベクトルの定義により、k2=|k|2=k2
=kx2+ky2+kz2
である。
※位置ベクトルの定義により、
r2=|r|2=r2
=x2+y2+z2
である。
ここで、両辺を-c2ℏ2で割って、辺々を移項し、エネルギーや運動量を、先程の演算子で表すと、
のように書き直すことが出来る。ここでも、座標x, y, zを明示した場合、
それらを位置ベクトルrとナブラ演算子の2乗∇2でまとめた場合、
ナブラ演算子の2乗をラプラシアンで書き直した場合の3通りの方法で表現しているが、
さらに、ダランベルシアン⧠を
の様に定義して、これを用いれば、先程の式はより簡潔に、
と書ける。この式を「クライン・ゴルドン方程式」と呼ぶ。
「非線形物理学」のテキストには、クライン・ゴルドン方程式:
と、その右辺が非線形な正弦関数に置き換わった、
ソリトン方程式である、サイン・ゴルドン(sine Gordon)方程式:
が、上記のように書かれていたが、これらのクライン・ゴルドン方程式は、
前節のクライン・ゴルドン方程式と式の形が異なっている。
Wikipediaには、「c=1、ℏ=1とする自然単位系が採用されることも多い。」
と書かれているので、一見すると、自然単位系に見えるが、
左辺にcが残っていることから、このmが、前節のμに
相当する変数であれば、単位系を変えずに成立すると思われる。
また、変数が減って、3次元から1次元になっている。
サイン・ゴルドン方程式とクライン・ゴルドン方程式の関係は、
単振り子と単振動(調和振動)の関係に
ここで、静止解のみを考える場合、サイン・ゴルドン方程式は、
と書けるので、両辺を積分すると、
となる(逆に、この式を積分すると上記の式になる)。続いて、半角の公式:
を右辺に用いることで、
を得る。
この微分方程式を解くために、
と置き換えると、左辺は、
と書き換えられ、また、2倍角の公式より、
であることを用いて、右辺は、
と書き換えられる。この微分方程式を解くと、
を得る。プラス符号をキンク解、マイナス符号を反キンク解という。
但し、x0は、積分定数である。
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