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速習・量子力学
第伍講 クライン・ゴルドン方程式

相対性理論は、「相対論」とも呼ばれるが、これと量子力学は、相容れないとよくいわれる。
しかし、相対性理論には、特殊相対性理論と一般相対性理論の二種類があって、
確かに、一般相対性理論の重力と、量子力学の摂動論の両者は、確かに相容れないのだが、
特殊相対性理論の範囲であれば、両者は極めて相性がいい。
例えば、量子力学に対して、特殊相対性理論を適用した、「相対論的量子力学」という理論が存在する。
ここでは、「相対論的量子力学」から、「クライン・ゴルドン方程式」と、
「非線形物理学」のソリトン方程式から、「サイン・ゴルドン方程式」について述べる。




クライン・ゴルドン方程式

まずは、本題に入る前に、準備として、
シュレーディンガー方程式の時と同様に、
エネルギーや運動量を以下の様に演算子化しておく。

次に、特殊相対性理論より、以下の式:
E2c2|p|2m2c4c2(px2py2pz2)+m2c4
を、上記の様に演算子化させ、波動関数:
φ(r, t) =Aei(krωt)
φ(x, y, z, t) =Aei(kxxkyykzzωt)

に左側から作用させると、

となる。ここでは、座標x, y, zを明示した場合、
それらを位置ベクトルrとナブラ演算子の2乗2でまとめた場合、
ナブラ演算子の2乗をラプラシアンで書き直した場合の3通りの方法で表現している。
※運動量ベクトルの定義により、p2=|p|2p2px2py2pz2 である。
※波数ベクトルの定義により、k2=|k|2k2kx2ky2kz2 である。
※位置ベクトルの定義により、 r2=|r|2r2x2y2z2 である。

ここで、両辺を-c22で割って、辺々を移項し、エネルギーや運動量を、先程の演算子で表すと、

のように書き直すことが出来る。ここでも、座標x, y, zを明示した場合、
それらを位置ベクトルrとナブラ演算子の2乗2でまとめた場合、
ナブラ演算子の2乗をラプラシアンで書き直した場合の3通りの方法で表現しているが、
さらに、ダランベルシアン⧠を

の様に定義して、これを用いれば、先程の式はより簡潔に、

と書ける。この式を「クライン・ゴルドン方程式」と呼ぶ。




サイン・ゴルドン方程式

「非線形物理学」のテキストには、クライン・ゴルドン方程式:

と、その右辺が非線形な正弦関数に置き換わった、
ソリトン方程式である、サイン・ゴルドン(sine Gordon)方程式:

が、上記のように書かれていたが、これらのクライン・ゴルドン方程式は、
前節のクライン・ゴルドン方程式と式の形が異なっている。
Wikipediaには、「c=1、=1とする自然単位系が採用されることも多い。」
と書かれているので、一見すると、自然単位系に見えるが、
左辺にcが残っていることから、このmが、前節のμ
相当する変数であれば、単位系を変えずに成立すると思われる。
また、変数が減って、3次元から1次元になっている。
サイン・ゴルドン方程式とクライン・ゴルドン方程式の関係は、
単振り子と単振動(調和振動)の関係に (なぞら)えることができるだろう。

ここで、静止解のみを考える場合、サイン・ゴルドン方程式は、

と書けるので、両辺を積分すると、

となる(逆に、この式を積分すると上記の式になる)。続いて、半角の公式:

を右辺に用いることで、

を得る。

この微分方程式を解くために、

と置き換えると、左辺は、

と書き換えられ、また、2倍角の公式より、

であることを用いて、右辺は、

と書き換えられる。この微分方程式を解くと、

を得る。プラス符号をキンク解、マイナス符号を反キンク解という。
但し、x0は、積分定数である。




参考文献

  1. 「素粒子物理学」(朝倉書店、2000年)
    E2p2c2m2c4、 波動関数は、φ(x, t)
  2. 「裳華房テキストシリーズ - 物理学 素粒子物理学」(裳華房、2003年)
    E2=(|p|c)2+(mc2)2、 波動関数は、φ(r, t)
  3. 「今日から使える量子力学」(講談社、2006年)
    ※静止質量をm0として、E2m02c4c2p2、波動関数は、ψ(r, t)
  4. 「32ページの量子力学入門」(暗黒通信団、2010年)
    E2c2p2m2c4、 波動関数はψ
  5. 「非線形物理学―カオス・ソリトン・パターン―」(裳華房、2010年)
    ※波動関数はφmμに相当する変数であれば、単位系を変えずに成立すると思われる。
  6. 「よくわかる量子力学」(東京図書、2011年)
    E2=|p|2c2m2c4、 波動関数はφ(x, t)
  7. 「クライン-ゴルドン方程式 - Wikipedia」
    ε2m2c4c2p2、 波動関数は、φ(x, t)
  8. 「EMANの物理学・量子力学・クライン・ゴルドン方程式」
    E2p2c2m2c4、 波動関数はφ
    ダランベルシアン⧠の定義が、文献1や文献7と正負が逆



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