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チェビシェフ多項式

チェビシェフ多項式(Chebyshev polynomial)は、
エルミート多項式(Hermite polynomial)と同様、
スツルムリウビル型微分方程式の一つである、
チェビシェフの微分方程式を満たす多項式のことをいう。
また、これは三角関数におけるn倍角の公式を
多項式の形で表現したものだともいえる。
特に、第1種チェビシェフ多項式Tn(x)は、
そのミニマックス性により、関数近似に用いられる。




第1種チェビシェフ多項式

第1種チェビシェフ多項式Tn(x)は、
x=cos θθ=arccos x
としたとき、
Tn(cos θ)=cos Tn(x)=cos (n arccos x)
で定義される。但し、xの定義よりその定義域は、
-1 ≤ cos θ ≤ 1 ⇔ -1 ≤ x ≤ 1
の範囲に制限される。この定義より明らかに、n=0のとき、
T0(x)=1
であり、n=1のとき、
T1(x)=x
である。また、加法定理:
cos ( ± θ) =cos cos θ ∓ sin
が成り立つ(複号同順)。この両式の辺々の和をとると、
cos (θ)+cos (θ) =2cos cos θ
となるから、これをチェビシェフ多項式の形で表せば、
Tn+1(x) =2xTn(x) -Tn-1(x)
という漸化式が得られる。最初の2つの項は既に求めてあるので、
この式を用いて、順に以下の多項式を得る。

これをグラフ作成ツール「gnuplot」を用いて、グラフ化する。
「gnuplot」を起動して、以下のコマンドを入力し、グラフを生成する。
(勿論、出力先のディレクトリは、各自の環境に応じて適宜変更する。)

set terminal png
set xrange[-1.1:1.1]
set yrange[-1.1:1.1]
set xtics 0.1
set ytics 0.1
set grid
plot 1
replot x
replot 2*x**2-1
replot 4*x**3-3*x
replot 8*x**4-8*x**2+1
set output 'c:\temp\chebyshevgraph.png'
replot 16*x**5-20*x**3+5*x
exit
この方法により生成したグラフを以下に示す。
このグラフからは、-1以上1以下のxの定義域において、
最大値が1、最小値が-1に揃っていることが分かる。
この性質のことをミニマックス性といい、関数近似に用いられる。





チェビシェフの微分方程式の導出

まず、第1種チェビシェフ多項式Tn(x)の両辺を
xで微分し、その1階導関数を求めると、

となり、ここで

を代入すると、1階導関数は、

となる。ここで、

と置き、これをxで微分すると、

となるから、これを用いて、2階導関数:

が求められる。ここで、微分方程式の係数を

と置き、各々を代入して、cos(n arccosx)及び、
sin(n arccosx)に関して、係数を比較すると、

という条件をa, b, cは満たさなければならないことが分かる。
ここでは単純に比をとって、

と置けばよい。従って、チェビシェフの微分方程式:

が得られる。さらに、両辺にw(x)を掛けて、

とする。ここで、

より、

であることを考えると、

という形で書くことも出来る。
これは、スツルムリウビル型微分方程式:

において、

と置いた場合に他ならない。




チェビシェフ多項式の母関数の導出

フーリエ余弦級数展開:

において、右辺を2倍し、
ant n
と置くと、

となる。これがチェビシェフ多項式の母関数である。
これを変形して、

ここで、オイラーの公式:

を代入すると、

続いて、無限等比級数の和:

を用いて、

と変形出来る。但し、途中で再び、オイラーの公式:

を用いた。
従って、最終的に、チェビシェフ多項式の母関数:

を得る。




第2種チェビシェフ多項式

第1種チェビシェフ多項式Tn(x)と 同様のxの定義において、
Un (x) ≡ sin
を考え、これを第2種チェビシェフ多項式 Un(x)と定義する(定義1)。
しかし、この定義だとsinθを根号で表す必要があり、有理整関数の形で書くことが出来ない。
そこで、第1種チェビシェフ多項式Tn(x)の 1階導関数において、

と定義すれば(定義2)、先程の式は

の様に表すことが出来る。
第2種チェビシェフ多項式Un(x)をこちらで定義しているテキストもある。

ところで、一部の数式処理ソフト等では、多項式の添え字と次数とを一致させる為に、

の様に第2種チェビシェフ多項式Un(x)を定義している(定義3)。
この場合、第1種チェビシェフ多項式Tn(x)との関係は、

となる。以上をまとめたものを次の表に示す。

定義1 定義2 定義3




参考文献

  1. 「物理のための応用数学」(裳華房、1988年)
  2. 「近似と特殊関数―補間多項式とシュレーディンガー方程式への応用」(早稲田出版、2006年)



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