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ベルヌーイ数の応用―テイラー展開―

「冪級数同士の積とテイラー展開」では、
f(x)=tan xf(x)=cot xf(x)=tanh xf(x)=coth x
に関して、そのテイラー展開の結果を示したが、ここでは、
「ベルヌーイ数とベルヌーイ多項式」で定義した、 ベルヌーイ数を用いることで、
それらのテイラー展開がより簡潔に表示できることを示す。

目次

偶数番目のベルヌーイ数の母関数
f(x)=coth xのテイラー展開
f(x)=tanh xのテイラー展開
f(x)=cot xのテイラー展開
f(x)=tan xのテイラー展開
オイラー数En




偶数番目のベルヌーイ数の母関数

まず、偶数番目のベルヌーイ数の母関数を考える。ベルヌーイ数には、
B1を除き、奇数番目のべルヌーイ数は0であるという性質があるから、
全体の母関数からB1t の項を引けばよい。
「ベルヌーイ数とベルヌーイ多項式」において、
ベルヌーイ数には2通りの定義が存在することを述べたが、定義1の場合、

であり、定義2の場合、

であるから、双方共に同様の結果を得る。従って、

となることが示された。




f(x)=coth xのテイラー展開

次に、双曲線余接関数coth xの定義より、

となる。但し、最後の式変形では、分子及び分母にexを掛けた。
ところで、偶数番目のベルヌーイ数の母関数において、t=2xとすると、

となるので、両辺をxで割って、f(x)=coth xのテイラー展開:

を得る。




f(x)=tanh xのテイラー展開

続いて、双曲線関数の加法定理:

において、前者を後者で割れば、

となる。但し、最後の式変形では、
分子及び分母をcosh α cosh βで割った。
ここで、αβxとして、2倍角の定理:

を得る。その逆数をとって、

と導かれる。従って、f(x)=tanh xのテイラー展開:

を得る。




f(x)=cot xのテイラー展開

更に、双曲線関数と三角関数との関係より、

と導かれる。従って、f(x)=cot xのテイラー展開:

を得る。




f(x)=tan xのテイラー展開

最後に、正接関数tan xのテイラー展開を導出する。
三角関数の加法定理より、

となる。但し、最後の式変形では、
分子及び分母をcos α cos βで割った。
ここで、αβxとして、2倍角の定理:

を得る。その逆数をとって、

と導かれる。従って、f(x)=tan xのテイラー展開:

を得る。

また、別解として、双曲線正接関数tanh x
テイラー展開から導く方法でも導出できることを示す。
双曲線関数と三角関数との関係を用いて、

と導かれる。これは確かに先程導いた式と一致している。




オイラー数En

ベルヌーイ数Bn以外にテイラー展開に用いられるものとして、
オイラー数Enがあるが、これには、正割関数f(x)=sec x
テイラー展開における展開係数として定義される場合(こちらを以降「定義1」と呼ぶ):

と、双曲線正割関数f(x)=sech xのテイラー展開における
展開係数として定義される場合(こちらを以降「定義2」と呼ぶ):

の二通りの定義がある。「定義1」の場合は、余弦関数f(x)=cos xの逆数であり、
「定義2」の場合は、双曲線余弦関数f(x)=cosh xの逆数であるが、
どちらも偶関数であることから、冪級数同士の積が1になるように、偶数次の係数のみを計算すれば良い。

なお、頂点(vertex)の数をV、辺(edge)の数をE、面(face)の数をFとしたとき、凸多面体に対し、
χVEF=2
が成り立ち、これを「オイラーの多面体定理」と呼ぶが、このとき、χは、「オイラー標数」と呼ばれている。また、
γ ≡ limn→∞ (1+1/2+1/3+…+1/n-logen)=0.5772156649…
は、「オイラーの定数」、或いは、「オイラー・マスケローニ定数」と呼ばれている。




参考文献

  1. 「ベルヌーイ数とゼータ関数」(牧野書店、2001年)



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