マクローリン展開

グラフ作成ツール「gnuplot」を用いて、マクローリン展開(Maclaurin expansion)をグラフに描いてみた。
一般に、マクローリン展開は、

で表される。今回、近似の対象に用いた関数 yf(x)(赤)
f(x)=exf(x)=cos xf(x)=sin xf(x)=cosh xf(x)=sinh x
であるが、これに対し、いずれの関数のグラフも
第1項(緑)第2項(青)第3項(紫)第4項(水色)第5項(茶色)
の順に近似の精度が高くなっている事が理解できるだろう。
これらのグラフからは、マクローリン展開が水平方向への補正による、
「horizontal」な近似であるという印象を受ける。

目次

f(x)=exのマクローリン展開
f(x)=cos xのマクローリン展開
f(x)=sin xのマクローリン展開
オイラーの公式の導出とその応用
f(x)=cosh xのマクローリン展開
f(x)=sinh xのマクローリン展開
双曲線関数の加法定理




f(x)=exのマクローリン展開

f(x)=exのマクローリン展開は、次式で表される。

上記の結果をグラフ作成ツール「gnuplot」を用いて、グラフ化する。
「gnuplot」を起動して、以下のコマンドを入力し、グラフを生成する。
(勿論、出力先のディレクトリは、各自の環境に応じて適宜変更する。)
set terminal png
set xrange[-5:5]
set yrange[-5:5]
set xtics 0.5
set ytics 0.5
set grid
plot exp(x)
replot 1
replot 1+x
replot 1+x+x**2/2!
replot 1+x+x**2/2!+x**3/3!
set output 'c:\temp\maclaurinofexp.png'
replot 1+x+x**2/2!+x**3/3!+x**4/4!
exit
この方法により生成したグラフを以下に示す。


GIFアニメーション作成ソフトでGIFアニメーション化したグラフ:




f(x)=cos xのマクローリン展開

f(x)=cos xのマクローリン展開は、次式で表される。

上記の結果をグラフ作成ツール「gnuplot」を用いて、グラフ化する。
「gnuplot」を起動して、以下のコマンドを入力し、グラフを生成する。
(勿論、出力先のディレクトリは、各自の環境に応じて適宜変更する。)
set terminal png
set xrange[-5:5]
set yrange[-5:5]
set xtics 0.5
set ytics 0.5
set grid
plot cos(x)
replot 1
replot 1-x**2/2!
replot 1-x**2/2!+x**4/4!
replot 1-x**2/2!+x**4/4!-x**6/6!
set output 'c:\temp\maclaurinofcos.png'
replot 1-x**2/2!+x**4/4!-x**6/6!+x**8/8!
exit
この方法により生成したグラフを以下に示す。
f(x)は偶数次の項のみで近似できることから、
cos xが偶関数であることが分かるだろう。


GIFアニメーション作成ソフトでGIFアニメーション化したグラフ:




f(x)=sin xのマクローリン展開

f(x)=sin xのマクローリン展開は、次式で表される。

上記の結果をグラフ作成ツール「gnuplot」を用いて、グラフ化する。
「gnuplot」を起動して、以下のコマンドを入力し、グラフを生成する。
(勿論、出力先のディレクトリは、各自の環境に応じて適宜変更する。)
set terminal png
set xrange[-5:5]
set yrange[-5:5]
set xtics 0.5
set ytics 0.5
set grid
plot sin(x)
replot x
replot x-x**3/3!
replot x-x**3/3!+x**5/5!
replot x-x**3/3!+x**5/5!-x**7/7!
set output 'c:\temp\maclaurinofsin.png'
replot x-x**3/3!+x**5/5!-x**7/7!+x**9/9!
exit
この方法により生成したグラフを以下に示す。
f(x)は奇数次の項のみで近似できることから、
sin xが奇関数であることが分かるだろう。


GIFアニメーション作成ソフトでGIFアニメーション化したグラフ:




オイラーの公式の導出とその応用

f(x)=exのマクローリン展開の式において、 xiθを代入すると、

より、オイラーの公式:
eiθ =cos θisin θ
を得る。特に、θπのとき、
eiπ=-1
となる。これは、複素数平面上での180度回転が、
「折り返し」であることを意味する。

ここで、オイラーの公式において、θの代わりに、-θとすると、
eiθ =cos θi sin θ
となるが、両式の辺々を加え合わせると、
eiθeiθ=2cos θ
cos θ=(eiθeiθ)/2
となって、余弦関数を複素指数関数の式で表すことができる。
同様に、両式の辺々の差分をとると、
eiθeiθ=2i sin θ
sin θ=(eiθeiθ)/2i
となって、正弦関数も複素指数関数の式で表すことができる。

さらに、オイラーの公式において、θα ± βを代入すると、
cos (α ± β)+i sin (α ± β) =e(α ± β)eαe ± β
=(cos α cos β ∓ sin α sin β) +i (sin α cos β ± cos α sin β)

ここで、実部と虚部の独立性により、
cos (α ± β) =cos α cos β ∓ sin α sin β (複号同順)
sin (α ± β) =sin α cos β ± cos α sin β (複号同順)
となるから、余弦関数と正弦関数に関して、三角関数の加法定理を得る。

また、下の式を上の式で割り、分子分母をcos α cos βで割ると、

となり、正接関数に関しても、三角関数の加法定理を得る。




f(x)=cosh xのマクローリン展開

f(x)=cosh xのマクローリン展開は、次式で表される。

上記の結果をグラフ作成ツール「gnuplot」を用いて、グラフ化する。
「gnuplot」を起動して、以下のコマンドを入力し、グラフを生成する。
(勿論、出力先のディレクトリは、各自の環境に応じて適宜変更する。)
set terminal png
set xrange[-10:10]
set yrange[-10:210]
set xtics 1
set ytics 10
set grid
plot cosh(x)
replot 1
replot 1+x**2/2!
replot 1+x**2/2!+x**4/4!
replot 1+x**2/2!+x**4/4!+x**6/6!
set output 'c:\temp\maclaurinofcosh.png'
replot 1+x**2/2!+x**4/4!+x**6/6!+x**8/8!
exit
この方法により生成したグラフを以下に示す。
やはりf(x)は偶数次の項のみで近似できることから、
cosh xも偶関数であることが分かるだろう。




f(x)=sinh xのマクローリン展開

f(x)=sinh xのマクローリン展開は、次式で表される。

上記の結果をグラフ作成ツール「gnuplot」を用いて、グラフ化する。
「gnuplot」を起動して、以下のコマンドを入力し、グラフを生成する。
(勿論、出力先のディレクトリは、各自の環境に応じて適宜変更する。)
set terminal png
set xrange[-10:10]
set yrange[-500:500]
set xtics 1
set ytics 50
set grid
plot sinh(x)
replot x
replot x+x**3/3!
replot x+x**3/3!+x**5/5!
replot x+x**3/3!+x**5/5!+x**7/7!
set output 'c:\temp\maclaurinofsinh.png'
replot x+x**3/3!+x**5/5!+x**7/7!+x**9/9!
exit
この方法により生成したグラフを以下に示す。
やはりf(x)は奇数次の項のみで近似できることから、
sinh xも奇関数であることが分かるだろう。




双曲線関数の加法定理

双曲線関数にも、双曲線関数版のオイラーの公式の様な式が存在するのだろうか。
実際に、実指数関数f(x)=exのマクローリン展開の式において、

と計算すると、実指数関数exを偶関数部分と奇関数部分に分解することができて、
ex=cosh x+sinh x
という、双曲線関数版のオイラーの公式の様な式は、一応導けるが、本来、
実指数関数exを偶関数部分と奇関数部分に分解し、前者を双曲線余弦関数cosh x
後者を双曲線正弦関数sinh xと呼ぶように定義したのであるから、実指数関数が、
双曲線余弦関数と双曲線正弦関数の和で表せるというのは、自明の結果に過ぎない。

上記の理由により、三角関数の加法定理のときみたいに、実部と虚部の独立性を用いて、
双曲線関数の加法定理を導出することはできないが、先程のように、
複素指数関数の式で、余弦関数や正弦関数を表すことはできるため、
双曲線余弦関数cosh xや、双曲線正弦関数sinh xの定義の式と比較して、
双曲線余弦関数cosh xや、双曲線正弦関数sinh xの加法定理:
cosh (α ± β) =cosh α cosh β ± sinh α sinh β (複号同順)
sinh (α ± β) =sinh α cosh β ± cosh α sinh β (複号同順)
及び、双曲線正接関数tanh xの加法定理:

を導出することができる。


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