ガンマ関数の応用

「ベータ関数・ガンマ関数・ゼータ関数・イータ関数 (β関数・Γ関数・ζ関数・η関数)」
において、登場したガンマ関数であるが、その汎用性は極めて高い。
ここでは、ガンマ関数の応用として、

  • スターリングの公式
  • 相反公式(相補公式)
  • 倍数公式
  • 球の体積
に関して解説する。相反公式(相補公式)と倍数公式は、
ゼータ関数の双対性の式を導出する際に用いるのだが、
その導出過程が載っているテキストは少ない。
ましてや、複素積分を用いない場合はより限られるだろう。




スターリングの公式

ガンマ関数は、階乗を実数・複素数の領域まで拡張したものである、と述べた。
しかしながら、階乗は極めて巨大な数であり、例えば、70の階乗(70!)は、
10の100乗(10100)であるgoogol(「SI接頭辞一覧」を参照)に匹敵する、という。
こうした巨大数を扱う場合の常套手段として、その自然対数を考えてみる。
以下、次の様に変形する。

  1. 階乗は、総積記号で表せる。
  2. lnAB=lnA+lnBを用いて、総積記号から総和記号に変換する。
  3. 総和記号を積分にして、離散和を連続和にする。
  4. 部分積分を用いて、対数関数の積分を行う。
この方針に従って、計算すると、

と近似される。最終的に得られた近似式を「スターリングの公式」と呼ぶ。
スターリングの公式には、より精度の高い近似式として、

が存在する。




相反公式(相補公式)

ベータ関数ガンマ関数の関係及び、ベータ関数の定義2において、
p=1-sqsと代入することにより、

まず、xt2と置くと、dx=2t dt

x 0→∞
t 0→∞
であるが、ここでさらに、

の様に、積分範囲を分割する。

続いて、tu-1と置くと、 dt=-u-2du

t 1→∞
u 1→0
となるので、括弧内第2項目は、次の様に変形出来る。

最後の式変形にて、再び変数をuからtに戻しておいた。
また、「無限等比級数とテイラー展開」の記事で述べたように、

であるから、従って、

の様に式変形できる。

一方、f(x)=cossxをフーリエ級数展開する
(「フーリエ級数とパーセバルの等式」の記事の式:

において、Lπ)。
そもそも余弦関数は偶関数なので、bn=0となって、

ここで、加法定理:

の辺々を組み合わせて、積和の公式:

を得られ、これを用いて、

を得る。

従って、f(x)=cossxのフーリエ級数展開は、

で表せるが、ここで、x=0とすると、

となる。両式の結果を照合して、相反公式:

を得る。ここで、s=1/2を代入すると、

が得られる。




倍数公式

ベータ関数の定義3において、psqsとすると、

ここで、φ≡2θと置くと、=2

θ 0→π/2
φ 0→π
となるので、

ここで、正弦関数は、xπ/2という軸に対し、
鏡映対称性(左右対称性)を持つこと及び、
ベータ関数の定義3において、2p-1=0を満たすpが、
p=1/2である、ということを用いた。
さらに、ベータ関数とガンマ関数の関係により、

であるから、両辺をΓ(s)で割れば、倍数公式:

が得られる。ここで、s=1/2を代入すると、

を得る。




ヤコビアンとガウス積分

本題に入る前に、準備として、ヤコビアンとガウス積分について述べる。
2次元直交座標(x, y)から極座標(r, θ)への変数変換は、

であるから、その微小領域の変換をdxdy=|J|drdθと置くと、
そのヤコビアン(ヤコビ行列式):|J|は、

で与えられる。

3次元直交座標(x, y, z)から 極座標(r, θ, φ)への変数変換は、

であるから、その微小領域の変換をdxdydz=|J|drdθdφと置くと、
そのヤコビアン(ヤコビ行列式):|J|は、

で与えられる。

ガウス型関数(ガウシアン)の積分を「ガウス積分」と呼ぶ。ガウス積分:

の積分変数をxと書いても、yと書いても、定積分の値I は変わらない筈だ。
即ち、両者の辺々を掛け合わせ、先程のヤコビアンを用いれば、極座標の二重積分に変換できて、

と求めることが出来る。

さらに、両辺をaで微分すると、

という式が得られる。一般に、両辺をan回微分すると、

となる。ダブル階乗!!は、偶数のみ、奇数のみの階乗、の様に、
一つ置きの総積を意味する。以下、ガウス積分の公式をまとめる。

上記は、開区間(-∞ , ∞)の場合だが、被積分関数が偶関数なので、
半開区間[0 , ∞)の場合は、単純に1/2を掛けて、

と求められる。




球の体積

半径がaの球の体積を考える。その微小体積は、
ヤコビアンを用いて、dVdxdydzr2sinθdrdθdφと表せるから、
極座標の三重積分に変換できて、

と求めることが出来る。

ところで、「クォドラティック・スフィア(quadratic sphere)」とは何であろうか。
これは、「2次元の(quadratic)」、「球(sphere)」、即ち、円(circle)のことを指す。
逆に、円の面積は「2次元の球の体積V2」である、とも考えられる。
つまり、先程求めた球の体積は、「3次元の球の体積V3」に他ならない。
一般的には、この「3次元の球の体積V3」を「球の体積」と呼んでいるに過ぎない。
では、その定義を拡張して、任意の次元d に対して、その球の体積Vdを半径rの式で
表すことが出来るのではないだろうか。なお、このd は、次元(dimension)の頭文字である。

次に、V2V3を微分した場合を考えよう。
これらを、それぞれS2S3と呼ぶことにすると、

となって、一般的には、S2は円周、S3は球の表面積と呼ばれる。
ここでは、これらを、「2次元の球の表面積S2」、 「3次元の球の表面積S3」と呼ぶ。
即ち、この定義も拡張して、任意の次元d に対して、その球の表面積Sd

と表すことが出来る。

d次元空間全域を覆い尽くす積分は、次のd 重積分:

及び、d 次元の球の表面積(或いは、球殻)Sdの半径rに対する積分:

による重ね合わせの二通りで表現できる。ここで、tr2 と置くと、dt=2r dr

r 0→∞
t 0→∞
となって、ガンマ関数で表現できる形式になる。
勿論、二通りの表現の結果は等しくなるはずだから、係数:

が得られる。従って、d 次元の球の体積Vd及び、 表面積Sdは、

で与えられることが分かる。

しかし、このままの形式だと、ガンマ関数の変数が、次元d が偶数のときは、整数になるが、
次元d が奇数のときは、半整数になり、扱いにくいので、場合分けして考えることにする。
例えば、d=1のときを考えると次式の様になる。

これは、先程のガウス積分の式で、a=1とした場合に相当するが、
既に述べた様に、相反公式(相補公式)や倍数公式において、
s=1/2を代入して求めても同様の結果を得られる。
0以上の整数n=0, 1, 2, …に対して、d=2n(偶数)のとき、

であり、d=2n+1(奇数)のとき、

となる。但し、ダブル階乗!!は、偶数のみ、奇数のみの階乗、の様に、
一つ置きの総積を意味する。d=0, 1, 2, 3, 4, 5, 6に対して、
具体的に球の体積及び表面積を求めると、以下の様になる。




参考文献

  1. 「物理のための応用数学」(裳華房、1988年)



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