「ベータ関数・ガンマ関数・ゼータ関数・イータ関数
(β関数・Γ関数・ζ関数・η関数)」
において、登場したガンマ関数であるが、その汎用性は極めて高い。
ここでは、ガンマ関数の応用として、
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ガンマ関数は、階乗を実数・複素数の領域まで拡張したものである、と述べた。
しかしながら、階乗は極めて巨大な数であり、例えば、70の階乗(70!)は、
10の100乗(10100)である
こうした巨大数を扱う場合の常套手段として、その自然対数を考えてみる。
以下、次の様に変形する。
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ベータ関数とガンマ関数の関係及び、ベータ関数の定義2において、
p=1-s、q=sと代入することにより、
まず、x ≡ t2と置くと、
dx=2t dt
x | 0→∞ |
t | 0→∞ |
続いて、t ≡ u-1と置くと、
dt=-u-2du
t | 1→∞ |
u | 1→0 |
一方、f(x)=cossxをフーリエ級数展開する
(「フーリエ級数展開とパーセバルの等式による
ゼータ関数等の特殊値の導出」の記事の式:
において、L=π)。
そもそも余弦関数は偶関数なので、bn=0となって、
ここで、加法定理:
の辺々を組み合わせて、積和の公式:
を得られ、これを用いて、
を得る。
従って、f(x)=cossxのフーリエ級数展開は、
で表せるが、ここで、x=0とすると、
となる。両式の結果を照合して、相反公式:
を得る。ここで、s=1/2を代入すると、
が得られる。
ベータ関数の定義3において、p=s、q=sとすると、
ここで、φ≡2θと置くと、
dφ=2dθ
となるので、
θ
0→π/2
φ
0→π
ここで、正弦関数は、x=π/2という軸に対し、
鏡映対称性(左右対称性)を持つこと及び、
ベータ関数の定義3において、2p-1=0を満たすpが、
p=1/2である、ということを用いた。
さらに、ベータ関数とガンマ関数の関係により、
であるから、両辺をΓ(s)で割れば、倍数公式:
が得られる。ここで、s=1/2を代入すると、
を得る。
本題に入る前に、準備として、ヤコビアンとガウス積分について述べる。
2次元直交座標から2次元極座標への変数変換:
(x, y)→(r, θ)
を表す式は、
で与えられるから、その微小領域の変換を
dxdy=|J|drdθ
と置くと、そのヤコビアン(ヤコビ行列式):|J|は、
で与えられる。
3次元直交座標から3次元極座標への変数変換:
(x, y, z)→
(r, θ, φ)
を表す式は、
で与えられるから、その微小領域の変換を
dxdydz=|J|drdθdφ
と置くと、そのヤコビアン(ヤコビ行列式):|J|は、
で与えられる。
※3次元の極座標には、「円柱座標」と「球座標」の2種類があるが、
ここでは、「球座標」を3次元極座標と呼んでいる。
では、4次元直交座標から4次元極座標への変数変換:
(x1, x2, x3, x4)→
(r, θ1, θ2, θ3)
を表す式を、
で与える場合、その微小領域の変換を
dx1
dx2
dx3
dx4
=|J|dr
dθ1
dθ2
dθ3
と置いて、そのヤコビアン(ヤコビ行列式):|J|を
上記の2次元、3次元の場合と同様に求めると、
どのような式で表されるだろうか。
※4次元直交座標から4次元極座標への変数変換が、
記載されている書籍は、殆ど存在しないようだ…。
ヤコビアン(ヤコビ行列式)を実際に計算してみると、
の様に、4行4列の行列(4次正方行列)の行列式となるので、
サラスの方法(たすき掛け)ではなく、余因子展開(ラプラス展開)を用いて、
まずは、3行3列の行列(3次正方行列)の行列式へと、次元を下げてみる。
これらの3行3列の行列(3次正方行列)の行列式を計算すると、
及び、
となるので、4次元のヤコビアン(ヤコビ行列式):|J|は、
で与えられる。ここで、一般に、任意の次元d に対して、
ヤコビアン(ヤコビ行列式)|Jd|を定義すると、
と表すことが出来る。なお、このd は、次元(dimension)の頭文字である。
ガウス型関数(ガウシアン)の積分を「ガウス積分」と呼ぶ。ガウス積分:
の積分変数をxと書いても、yと書いても、定積分の値I は変わらない筈だ。
即ち、両者の辺々を掛け合わせ、先程のヤコビアンを用いれば、極座標の二重積分に変換できて、
と求めることが出来る。
さらに、両辺をaで微分すると、
という式が得られる。一般に、両辺をaでn回微分すると、
となる。ダブル階乗!!は、偶数のみ、奇数のみの階乗、の様に、
一つ置きの総積を意味する。以下、ガウス積分の公式をまとめる。
上記は、開区間(-∞ , ∞)の場合だが、被積分関数が偶関数なので、
半開区間[0 , ∞)の場合は、単純に1/2を掛けて、
と求められる。
半径がaの球の体積を考える。その微小体積は、
ヤコビアンを用いて、dV=dxdydz
=r2sinθdrdθdφと表せるから、
極座標の三重積分に変換できて、
と求めることが出来る。
ところで、「クォドラティック・スフィア(quadratic sphere)」とは何であろうか。
これは、「2次元の(quadratic)」、「球(sphere)」、即ち、円(circle)のことを指す。
逆に、円の面積は「2次元の球の体積V2」である、とも考えられる。
つまり、先程求めた球の体積は、「3次元の球の体積V3」に他ならない。
一般的には、この「3次元の球の体積V3」を「球の体積」と呼んでいるに過ぎない。
では、その定義を拡張して、任意の次元d に対して、
その球の体積Vdを半径rの式で表すことが出来るのではないだろうか。
次に、V2やV3を微分した場合を考えよう。
これらを、それぞれS2、S3と呼ぶことにすると、
となって、一般的には、S2は円周、S3は球の表面積と呼ばれる。
ここでは、これらを、「2次元の球の表面積S2」、
「3次元の球の表面積S3」と呼ぶ。
即ち、この定義も拡張して、任意の次元d に対して、その球の表面積Sdを
という式で表すことが出来る。
d次元空間全域を覆い尽くす積分は、次のd 重積分:
及び、d 次元の球の表面積(或いは、球殻)Sdの半径rに対する積分:
による重ね合わせの二通りで表現できる。ここで、t ≡ r2
と置くと、dt=2r dr
r | 0→∞ |
t | 0→∞ |
しかし、このままの形式だと、ガンマ関数の変数が、次元d が偶数のときは、整数になるが、
次元d が奇数のときは、半整数になり、扱いにくいので、場合分けして考えることにする。
例えば、d=1のときを考えると次式の様になる。
これは、先程のガウス積分の式で、a=1とした場合に相当するが、
既に述べた様に、相反公式(相補公式)や倍数公式において、
s=1/2を代入して求めても同様の結果を得られる。
0以上の整数n=0, 1, 2, …に対して、d=2n(偶数)のとき、
であり、d=2n+1(奇数)のとき、
となる。但し、ダブル階乗!!は、偶数のみ、奇数のみの階乗、の様に、
一つ置きの総積を意味する。d=0, 1, 2, 3, 4, 5, 6に対して、
具体的に球の体積及び表面積を求めると、以下の様になる。
上記のガンマ関数を用いた式以外にも、殆どの書籍には載っていないのだが、
任意の次元d に対して、一般化したヤコビアン(ヤコビ行列式)|Jd|を用いて、
球の体積を計算する方法がある。当然、両者の方法で求めた結果は一致する
後の計算の準備として、4次元のヤコビアンに、2倍角の公式を用いて、
という式変形を行い、これを四重積分することによって、次の結果を得る。
この球の体積の結果は、確かに、ガンマ関数を用いた方法で求めた結果に一致している。
同様に、5次元のヤコビアンに、3倍角の公式を用いて、
という式変形を行い、これを五重積分することによって、次の結果を得る。
この球の体積の結果も勿論、ガンマ関数を用いた方法で求めた結果に一致する。
続いて、6次元のヤコビアンに、2倍角の公式を二度用いて、
という式変形を行い、これを六重積分することによって、次の結果を得る。
従って、d=4, 5, 6に対して、両者の方法で求めた、
球の体積の結果が一致することが確かめられた。
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