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ベータ関数・ガンマ関数・ゼータ関数・イータ関数
(β関数・Γ関数・ζ関数・η関数)

特殊関数の中には、ギリシャ文字のアルファベットを自身の名前に冠するものがある。
例えば、代表的なものには、ベータ関数(β 関数)や、
階乗の拡張であるガンマ関数(Γ 関数)がある。
他にもリーマンのゼータ関数(ζ 関数)や、
その交代級数版のディリクレのイータ関数(η 関数)、また、ここでは挙げなかったが、
超函数であるディラックのデルタ関数(δ 関数)等が存在する(次表)。

ベータ関数
(β 関数)
第1種オイラー積分
ガンマ関数
(Γ 関数)
第2種オイラー積分 階乗の拡張
デルタ関数
(δ 関数)
ディラックのデルタ超函数
(Dirac's delta distribution)
超函数
ゼータ関数
(ζ 関数)
リーマンのゼータ関数
(Riemann's zeta function)
自然数の逆数のべき乗和
イータ関数
(η 関数)
ディリクレのイータ関数
(Dirichlet's eta function)
ゼータ関数の交代級数版
これらのうち、ベータ関数やゼータ関数は、ガンマ関数で表すことが出来るし、
ゼータ関数とイータ関数の関係を用いれば、負ゼータ関数ζ(1-s)の特殊値が求められる。

目次

ガンマ関数―階乗の拡張―
ベータ関数
ベータ関数とガンマ関数の関係
ゼータ関数―自然数の逆数の冪乗和―
sinc関数とゼータ関数の特殊値
ゼータ関数とガンマ関数の関係
イータ関数―ゼータ関数の交代級数版―
イータ関数とガンマ関数の関係
負ゼータ関数ζ(1-s)の特殊値




ガンマ関数―階乗の拡張―

最初に、積分:

を考える。次に、

という積分を考える。積の微分公式より、部分積分の式:

が得られるので、これを用いて、

と次々に、計算出来る。

以上より、

であるから、これを繰り返すと、

が示せる。ここで、a=1のとき、

となるので、

と置く。これをガンマ関数(Γ関数)と呼ぶ。

即ち、ガンマ関数は階乗の拡張であるとみなすことができる。
但し、xは自然数のみならず、
実数・複素数の領域まで拡張することが出来る。
この定義より明らかに、ガンマ関数は、
Γ(x+1)=xΓ(x)
を満たす。特に自然数nに対して、
Γ(n)=(n-1) !
⇔Γ(n+1)=n !
が成り立つ。但し、左辺と右辺で変数が1だけずれていることには注意を要する。
また、変数を複素数の領域まで拡張することが出来ることを強調する意味で、

と書くこともある。

これをグラフ作成ツール「gnuplot」を用いて、グラフ化する。
「gnuplot」を起動して、以下のコマンドを入力し、グラフを生成する。
但し、標本点の数は、各自の必要に応じて変更しても構わない。
(勿論、出力先のディレクトリは、各自の環境に応じて適宜変更する。)

set terminal png
set xrange[-5:5]
set yrange[-5:5]
set xtics 0.5
set ytics 0.5
set grid
set sample 1024
set output 'c:\temp\gammafunc.png'
plot gamma(x)
exit

この方法により生成したグラフを以下に示す。




ベータ関数

多くのテキストでは、一般的に

をベータ関数の定義としているようである(定義1)。ここで、

と置くと、

t 0→1
x ∞→0

と置き換えられるので、

と変形出来る。テキストの中には、

をベータ関数の定義としているものもある(定義2)。

また、定義1で

t ≡ cos2θ
1-t=sin2θ
dt=-2sinθcosθ
と置くと、
t 0→1
θ π/2→0

と置き換えられるので、

と変形出来る。従って、ベータ関数は

と定義することも出来る(定義3)。

ところで、定義1において、

t ≡ 1-s
1-ts
dt=-ds
と置くと、
t 0→1
s 1→0

と置き換えられるので、

であるから、

が成立し、pqが可換であることが分かる。




ベータ関数とガンマ関数の関係

ガンマ関数:

において、
tu2dt=2du
と置くと、

と表せる。この表現形式を用いて、

を考え、両者の積をとると、

ここで、

と変数変換すると、ヤコビアンは、

であるから、
dudvrdr
となるので、rθを分離すると、
θに関する積分は、ベータ関数の定義3に他ならないから、

の様に変形出来る。従って、ベータ関数とガンマ関数の間には、関係式:

が成立する。




ゼータ関数―自然数の逆数のべき乗和―

まず、「自然数の逆数のべき乗和」を総和記号を用いて表した無限級数:

を関数として定義する。これをゼータ関数(ζ 関数)と呼ぶ。
ゼータ関数の発見者はオイラーだが、
リーマンが変数sを複素数にまで拡張したので、
リーマンのゼータ関数(Riemann zeta function)とも呼ばれる。

また、オイラーはゼータ関数と素数の関係を総積記号を用いて、

と表せることを示した。これは自然数の素因数分解の一意性による。
何故なら、総積記号の中身をテイラー展開すると、
これは無限等比級数の和の逆に他ならないから、

であり、従って右辺は

と書き直せる。ここで例えば、s=1の場合を考えると、

という項は、最初の括弧からは第4項を、2番目の括弧からは第3項を、
3番目の括弧からは第2項を選び、その他の括弧からは全部1を選んで掛ければよい。




sinc関数とゼータ関数の特殊値

正弦関数sin x及び、xπxに置き換えた、 sin πxも、ゼータ関数と同様に、
マクローリン展開」の記事で述べたように、総和記号で表すことも、
無限乗積展開と部分分数展開」の記事で述べたように、 総積記号で表すこともできる。

sinc関数は、カーディナル・サイン(cardinal sine)とも呼ばれ、
正弦関数をその変数で割って得られる関数であるが、次の2種類の定義を持つ。

※前者の様に、sin xxで割った場合(定義1)と、
後者の様に、sin πxπxで割った場合(定義2)があり、
定義1のsinc関数は、おそらく、高等学校の数学の極限の単元で
初めて登場するが、主に純粋数学で用いられる。
定義2のsinc関数は、主に、物理数学や情報数学で用いられ、ウェーブレット変換や、
ファインマン経路積分、モンゴメリー・オドリズコ予想等に登場する。

ゼータ関数ζ(s)において、特に、s=2の場合、即ち、ζ(2)は、
特に、「バーゼル問題」と呼ばれ、無限大に発散するのか、収束するのか、
収束するとすれば、その値はいくつになるのかという問題として提起された。
この問題を解いたのは、オイラーだが、その解法は、上記の正弦関数が、
総和記号と総積記号の両方で表せることを用いて、係数比較する方法だった。
勿論、sin xでも、sin πxでも、sinc xでも導出可能だが、
ここでは、最も簡単なsin xで解いてみることにする。
まず、x3の項に関して係数比較すると、

となり、ζ(2)の特殊値が、π2/6であることが分かる。

このζ(2)を二乗し、その際、総和記号のダミー変数を敢えて、mnの2種類の積とすると、
mn」の場合と、「mn」の場合の和として書ける。
mn」の場合は、s=4の場合、即ち、ζ(4)の特殊値に他ならない。
さらに、「mn」の場合は、「m<n」の場合と「m>n」の場合に分けられ、
しかも、両者は、対称性により、同値であるから、どちらか一方の2倍として計算できる。

続いて、x5の項に関しても同様に、係数比較すると、

と計算できるが、これと先程の計算結果を踏まえて、

という結果を得る。従って、ζ(4)の特殊値が、π4/90であることも示された。

または、やや技巧的な方法になるが、別解として、
上述のsinc関数(ここでは、定義1の方を用いる)を用いた導出方法も示す。
a4b4 =(a2b2)(a2b2) =(aib)(aib)(ab)(ab)
からの類推アナロジーにより、 sinc xとsinc ixの積を考え、
テイラー展開(マクローリン展開)による、総和記号を用いた表示:

と、無限乗積展開による、総積記号を用いた表示:

の2通りの表現を恒等式で結び、係数を比較すると、

となって、やはり、ζ(4)の特殊値が、π4/90であることが導出できる。
おそらく、こちらの別解の方が、煩雑ではない為、エレガントな解答に見えるだろう。

また、ゼータ関数ζ(s)のs=1の場合の特殊値、即ち、ζ(1)は、
「無限等比級数の和とテイラー展開」f(x)=ln(1-x)の記事より、
正の無限大に発散することが分かる。他にも、ゼータ関数の変数sが正の偶数の場合は、
フーリエ級数展開やパーセバルの等式、或いは、ベルヌーイ数により、
その特殊値が求められることが分かっている。
例えば、s=1、2、4、6、8の場合の特殊値、
即ち、ζ(1)、ζ(2)、ζ(4)、ζ(6)、ζ(8)は次のようにまとめられる。

これらの導出過程は、
「フーリエ級数展開とパーセバルの等式によるゼータ関数等の特殊値の導出」
「ベルヌーイ数の応用―ゼータ関数―」の記事を参照のこと。




ゼータ関数とガンマ関数の関係

ゼータ関数とガンマ関数の変数をともにsとして、両者の積を考える。

ここで、

tnx
dtndx
と置くと、

と変形出来る。ここで、無限等比級数の和を考えて、

と書き直す。なお、最後の変形は分母分子にそれぞれ、exを掛けた。
これを代入して、最終的に

の形を得る。ここで、最後に両辺をΓ(s)で割れば、

の様に、ゼータ関数をガンマ関数を用いて定義することが出来る。

この表示形式を用いれば、

が得られる。
※Γ(2)ζ(2)は、ボース・アインシュタイン分布関数を積分する際に使う。
※Γ(4)ζ(4)は、黒体輻射のプランクの式から、
シュテファン・ボルツマンの法則を導出する際に使う。




イータ関数―ゼータ関数の交代級数版―

ゼータ関数は、自然数の逆数のべき乗和であるが、これに対応する形で、
次の様にその偶数項の符号を負にした交代級数η(s):

を定義する。これをイータ関数(η 関数)、より正確には、
ディリクレのイータ関数(Dirichlet eta function)と呼ぶ。
イータ関数とゼータ関数の間には、

という関係があることが分かるので、この関係式:

を用いて計算すれば、

が得られる。これとは逆に、イータ関数の値が分かっていれば、
それを用いて、ゼータ関数の値を計算することが出来る。
これは、特に負ゼータ関数ζ(1-s)の特殊値を計算する際に重要となる。

また、イータ関数η(s)のs=1の場合の特殊値、即ち、η(1)は、
「無限等比級数の和とテイラー展開」f(x)=ln(1+x)の
記事より、ln2に収束することが分かる。
※この級数η(1)は、メルカトル級数と呼ばれている。
このことと、先程の結果を合わせれば、s=1、2、4、6、8の場合の特殊値、
即ち、η(1)、η(2)、η(4)、η(6)、η(8)は次のようにまとめられる。




イータ関数とガンマ関数の関係

ゼータ関数とガンマ関数の関係を計算したときと同様に、
イータ関数とガンマ関数の変数をともにsとして、両者の積を考える。

ここで、

tnx
dtndx
と置くと、

と変形出来る。ここで、無限等比級数の和を考えて、

と書き直す。なお、最後の変形は分母分子にそれぞれ、exを掛けた。
これを代入して、最終的に

の形を得る。ここで、最後に両辺をΓ(s)で割れば、

の様に、イータ関数もガンマ関数を用いて定義することが出来る。

または、やや技巧的な方法になるが、既にある、
「ゼータ関数とガンマ関数の関係」と、イータ関数をゼータ関数を用いて
表した式を組み合わせる為に、以下の様な計算を行う。

において、

と置くと、

と変形出来る。変数xyに変わっただけなので、

と変数をyからxに戻すことが出来て、

と計算出来る。ここで、最後に両辺をガンマ関数で割れば、
先程のイータ関数の積分表示を得る。

この表示形式を用いて、イータ関数の値を代入すれば、

が得られる。
※Γ(2)η(2)は、フェルミ・ディラック分布関数を積分する際に使う。




負ゼータ関数ζ(1-s)の特殊値

まず、初項a,公比rの無限等比級数を考えると、その和Sは、

で表されるが、ここで、a=1,rxとして、S0

及び、そのn階微分:

を定義する。n=1,2,3の場合を計算すると、

を得る。同様に右辺も計算すると、

次に、S2は、これを2で割ってから、(1+x)を掛ける。
続いて、S3も同様に、 3!で割ってから、(1+4xx2)を掛ける。
次にここまでで導出したものをまとめておく。

勿論この際、公比xは、前提条件:|x| < 1を満たさなければならないのだが、
ここでは、敢えて自らその禁を破ってx=-1を代入してみる。すると、

の様に、イータ関数を用いて表すことが出来る。
従って、イータ関数とゼータ関数の関係より、
負ゼータ関数ζ(1-s)の特殊値:

が得られる。
ζ(-1)は、弦理論において、光子の場合の弦全体のエネルギーから、
宇宙空間が何次元であるかを計算する際、繰り込みの計算に使う。
ζ(-3)は、カシミール効果において、繰り込みの計算をする際に使う。




参考文献

  1. 「物理のための応用数学」(裳華房、1988年)
  2. 「オイラー、リーマン、ラマヌジャン―時空を超えた数学者の接点」(岩波書店、2006年)



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