「ベータ関数・ガンマ関数・ゼータ関数・イータ関数
(β関数・Γ関数・ζ関数・η関数)」
において、登場したゼータ関数であるが、やはりこれも
「ベルヌーイ数とベルヌーイ多項式」で定義した、
ベルヌーイ数を用いることで、より簡潔に表示できる。
さらに、偶数ゼータ関数と負ゼータ関数の関係式を導出し、双対性の式を導出する。
また、ここでは、最後に数式処理ソフト「Maxima」において、
ベルヌーイ数やベルヌーイ多項式、及びゼータ関数を表示させるコマンドを記す。
本題に入る前に、準備として、三角関数の無限乗積展開について述べる。
正弦関数のテイラー展開の意義は、無限級数の和を総和記号で表すことにあった。
では、正弦関数を因数分解して、無限乗積を総積記号で表したらどうなるであろうか。
正弦関数には、
sin x=0 ⇔ x=nπ (n=0, ±1, ±2,…)
という性質があるから、係数をαとして、
と因数分解出来ると仮定する。ところで、この係数αは、
テイラー展開におけるxの一次の項の係数が1なので、係数比較により、
であるから、
となる。ここでは、後の計算の為に、xの代わりにπxを代入して、
としておく。
総積記号から総和記号へ変換する為に、両辺の対数をとると、
となる。ここで、
ln AB=ln A+ln B
の関係を用いた。
次に、対数関数を消去する為に、両辺をxで微分すると、
となる。続いて、両辺をx倍し、
を得る。
また、「ベルヌーイ数の応用―テイラー展開―」で述べた、
f(x)=cotxのテイラー展開の式において、
両辺をx倍した上で、xをπxに置き換えると、
となるので、ここで先程得られた結果とこの式とを比較すると、
変数sが正の偶数のゼータ関数の特殊値:ζ(2s)は、ベルヌーイ数を用いて、
と表すことが出来る。この式に従って計算すると、
を得る。これは確かに、
「フーリエ級数展開とパーセバルの等式」で
求めた結果に一致する。
また、ζ(0)もこの式で計算出来る。
また、負ゼータ関数の特殊値:ζ(1-s)も、ベルヌーイ数を用いて、
と表すことが出来る。これも式に従って計算すると、
を得る。これも確かに、正しい結果を出力している。
このことは、数式処理ソフト「Maxima」で調べられる。
ちなみに、ζ(0)の計算に用いたB1は、
「定義1」のベルヌーイ数の方に等しい。
偶数ゼータ関数の式:
において、sを2sに置き換えた負ゼータ関数の式:
を代入すると、両者の関係式:
を得る。両辺に、
を掛けて、整理すると、
となる。ここで、2sを改めてsと置くと、
を得る。この等式は、sが奇数の場合に対しても成り立つ。
次に、倍数公式(「ガンマ関数の応用」参照):
において、s≡2xと置いた式:
を代入すると、
と変形できる。
続いて、相反公式(「ガンマ関数の応用」参照):
において、
と置くと、
となる。従って、
を得る。さらに、πの指数部を
と分解して整理すると、双対性(duality)の式:
を得る。要するに、ガンマ関数に補ってもらうことで、
ゼータ関数の対称性は完全になるのである。
ここで、
と置くと、関数等式:
ξ(s)=ξ(1-s)
を満たす。ξ(s)は、「完備化されたゼータ関数」と呼ばれる。
「完備化されたゼータ関数」以外の、リーマンのゼータ関数の定義の拡張としては、
フルヴィッツのゼータ関数(Hurwitz zeta function):
が挙げられる。総和記号のダミー変数nの区間が、[1,∞)ではなく、
[0,∞)であることに注意する。この定義から、a=1のとき、
となって、リーマンのゼータ関数を内包していることは、明らかである。
リーマンのゼータ関数とガンマ関数の関係を計算したときと同様に、
フルヴィッツのゼータ関数ζ(s, a)とガンマ関数Γ(s)の積を考えると、
ここで、
t ≡ (n+a)x
dt=(n+a)dx
と置くと、
と変形出来る。ここで、無限等比級数の和を考えて、
と書き直す。なお、最後の変形は分母分子にそれぞれ、exを掛けた。
積分変数xをtで書き直しても一般性を失わないから、
と計算出来る。ここで、s-1乗を1乗とs-2乗の積に分解した。
このとき、ベルヌーイ多項式の母関数:
を思い出すと、被積分関数の一部:
が、ベルヌーイ多項式の形で表せることに気付く。
リーマンのゼータ関数とガンマ関数の関係を計算したとき、
被積分関数がベルヌーイ数の母関数を含んでいたのと同様に、
フルヴィッツのゼータ関数とガンマ関数の関係を計算すると、
被積分関数がベルヌーイ多項式の母関数を含んでいることに気付くだろう。
数式 | コマンド | 具体例 | 備考 |
---|---|---|---|
ベルヌーイ数:Bn | bern(n); |
|
n には数字が入る。このサイトの定義では、「定義1」の ベルヌーイ数に相当する。 ベルヌーイ多項式のコマンドで、 bernpoly(0,n); としても、同様の結果を得る。「定義2」の ベルヌーイ数が必要ならば、 bernpoly(1,n); とすればよい。
|
ベルヌーイ多項式:Bn(x) | bernpoly(x,n); |
|
n には数字が入る。x は、xに関する多項式という意味。x を他の文字にすれば、その文字に関する多項式になる。 bernpoly(0,n); とすれば、「定義1」のベルヌーイ数が得られ、 bernpoly(1,n); とすれば、「定義2」のベルヌーイ数が得られる。 |
偶数ゼータ関数の 特殊値:ζ(2s) |
zeta(n); |
|
n には数字が入る。但し、 n を奇数にした場合、適切な出力は得られない。 |
負ゼータ関数の 特殊値:ζ(1-s) |
zeta(n); |
|
n には数字が入る。 |
|