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ベルヌーイ数とベルヌーイ多項式

ベルヌーイ数(Bernoulli number)は、

等に応用される数であるが、その定義は母関数の
テイラー展開(マクローリン展開)により、定義される。
しかし、それには2通りの定義が存在する為、混乱を招く可能性がある。
ここでは、まず両者の違いを整理してみようと思う。

次に、ベルヌーイ数に対するメタ的な概念として、
ベルヌーイ多項式(Bernoulli polynomial)を考える。
ここでは、ベルヌーイ多項式の母関数を定義し、
母関数からベルヌーイ多項式を導出する形式をとる。
その際、2通りのベルヌーイ数が、ベルヌーイ多項式に
代入した値の違いに他ならないことに気づくだろう。

目次

冪級数同士の積
ベルヌーイ数の母関数の定義
母関数から漸化式
具体的なベルヌーイ数
ベルヌーイ多項式
ベルヌーイ数とベルヌーイ多項式の関係
まとめ




冪級数同士の積

本題に入る前に、準備として、
「冪級数同士の積とテイラー展開」
の記事で触れた、総和記号で表された
冪級数同士の積について再掲しておく。

冪級数同士の積を

の様に定義した場合、各係数には、

で表される関係がある。




ベルヌーイ数の母関数の定義

さて、まずベルヌーイ数の母関数を定義するが、
これには2種類の定義があり、文献によって、定義が異なっている。
ゼータ関数とガンマ関数の変数をともにs として、両者の積を考えたとき、

が得られるが、ここで、被積分関数においてs=2,xt として、これを

の様に、ベルヌーイ数の母関数と呼ぶ場合(定義1)と、
その右辺にet を掛けて、

をベルヌーイ数の母関数と呼ぶ場合(定義2)がある。

両者に共通しているのは分母の部分であるが、これを

の様にテイラー展開して両辺に掛けると、
左辺は先程の総和記号同士で表された冪級数同士の積となるから、

と置けば、

が得られる。

一方、右辺は定義1の場合、

と定義すると、

となり、定義2の場合、

と定義すると、

とテイラー展開できる為、

が得られる。




母関数から漸化式

定義1の場合、

ここで、最後の式において、両辺にn!を掛けると、

或いは、

の形で書ける。これを変形して、

であるから、ベルヌーイ数は

の様に漸化式の形で書くことも出来る。但し、

を先に与えておく必要がある。

定義2の場合、

ここで、下の式において、両辺にn!を掛けると、

或いは、

の形で書ける。これを変形して、

であるから、ベルヌーイ数は

の様に漸化式の形で書くことも出来る。
こちらは、n=0の場合も含めて適用することが出来る。




具体的なベルヌーイ数

次に、パスカルの三角形

nk \ k 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9
0 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1
1 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
2 1 3 6 10 15 21 28 36 45 55
3 1 4 10 20 35 56 84 120 165 220
4 1 5 15 35 70 126 210 330 495 715
5 1 6 21 56 126 252 462 792 1287 2002
6 1 7 28 84 210 462 924 1716 3003 5005
7 1 8 36 120 330 792 1716 3432 6435 11440
8 1 9 45 165 495 1287 3003 6435 12870 24310
9 1 10 55 220 715 2002 5005 11440 24310 48620
を利用して、具体的にベルヌーイ数を求める。

定義1の場合、

からは、情報が得られないが、

から、

が得られる。これを用いて、

定義2の場合、同様に計算すると、

となる。両者が唯一異なる点は、B1の符号が、
定義1の場合はマイナス、定義2の場合はプラスになるという点である。




ベルヌーイ多項式

ベルヌーイ数を拡張した概念にベルヌーイ多項式がある。
ベルヌーイ多項式Bn(x)に対して、

をベルヌーイ多項式の母関数と呼ぶ。
ベルヌーイ数のときと同様に、分母をテイラー展開して両辺に掛けると、
左辺は先程の総和記号同士の積となるから、

と置けば、

が得られる。
一方、右辺はこの場合、

と定義されるので、

とテイラー展開することにより、

が得られる。

次に、べき級数同士の積を考えて、

を得る。ここで、下の式において、両辺にn!を掛けると、

或いは、

の形で書ける。これを変形して、

であるから、ベルヌーイ多項式は

の様に漸化式の形で書くことも出来る。
これも、n=0の場合も含めて適用することが出来る。

ベルヌーイ数のときと同様に、パスカルの三角形を利用して、
具体的にベルヌーイ多項式を求める。

これを繰り返して、

を得る。




ベルヌーイ数とベルヌーイ多項式の関係

ベルヌーイ多項式の母関数に、x=0とx=1を代入すると、

となって、それぞれ、定義1、定義2のベルヌーイ数の母関数を得る。
また、各ベルヌーイ多項式にx=0を代入すると、

を得るが、これは定義1のベルヌーイ数に等しい。
同様に、x=1を代入すると、

を得るが、これも定義2のベルヌーイ数に等しい。
要するに、ベルヌーイ数の定義1と定義2の違いは、
ベルヌーイ多項式の母関数に、x=0を代入したか、
それともx=1を代入したかの違いに過ぎない。
従って、ベルヌーイ多項式はベルヌーイ数を拡張したものであり、
これを包括する、メタ的な概念であるといえるだろう。




まとめ

ベルヌーイ数

定義1のベルヌーイ数
(x=0のとき)
定義2のベルヌーイ数
(x=1のとき)
ベルヌーイ数の
母関数
ベルヌーイ数の
定義式
漸化式
具体的な
ベルヌーイ数

ベルヌーイ多項式

ベルヌーイ多項式の
母関数
ベルヌーイ多項式の
定義式
漸化式
具体的な
ベルヌーイ多項式




参考文献

  1. 「ベルヌーイ数とゼータ関数」(牧野書店、2001年)



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